問題社員の解雇

Q X社では経営改善の一環として余剰人員の整理を行う予定である。勤務成績不良の社員、業務命令例に従わない社員、私傷病で長期間欠勤している社員などを解雇していきたい。解雇の手続きに置いて留意すべきことは何か。また、労働契約や就業規則で予め定めていない解雇事由では解雇できないのか。

A 1 解雇には、債務不履行状態の社員に対して会社が一方的に労働契約を終了させる「普通解雇」と懲戒処分として行われる「懲戒解雇」があります。今回は普通解雇について問題となります。

 

 普通解雇においては、整理解雇やユニオンショップ協定に基づく解雇などの例外を除き、労働者が労働契約上の労務提供債務を履行できない場合が解雇事由となります。例えば、①社員の能力適格性の欠如(勤務成績不良)、②社員の規律違反(勤務態度不良、業務命令違反)、③私傷病等の理由による労務提供不能が代表的なものとなります。

 

 解雇は労働者の労働契約上の地位を一方的に奪うものであるため、適正な手続きを尽くさなければなりません。

 

2 まず、労働契約又は就業規則に解雇に関する規定を定めましょう。就業規則を定める場合には解雇に関する条項は絶対的記載事項とされています(労基法89条3号)。規定では、典型的な自由はもれなく記載したうえで、「その他各号に準ずるやむを得ない事由のあるとき」といった包括条項を定めておきます。

 

 なぜなら、就業規則に定めた解雇事由以外の事由による解雇については、解雇事由を限定する趣旨である特段の事情がない限り認められるとした裁判例がありますが(ナショナルウエストミンスター銀行事件・東京地決平12.1.21・労判782-23)、特段の事情を認めて定めた解雇事由以外の事由による解雇を無効とした裁判例もあるからです(寺建築研究所事件・東京高判昭53.6.20r労判309-50)。

 

3 解雇は上記のように労働者の地位を使用者が一方的に奪うものであるので、法律上に規制が設けられています。解雇権濫用法理(労契法16条)、国籍・信条・社会的身分による差別の禁止(労基法3条)、業務上災害・産前産後休業の場合の制限(労基法19条)、労働組合員であることや正当な組合活動をしたことを理由とする解雇の禁止(労組法7条4号)、性別による差別の禁止(男女雇用機会均等法6条4号)、公益通報をした労働者の解雇禁止(公益通報法3条)などです。その中で重要なのが、解雇権濫用法理(労契法16条)で、解雇は当該解雇の具体的な状況について「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上の相当」と認められなければ無効となるとされています。

 

 「客観的に合理的な理由」については、労働契約を一方的に打ち切るだけの解雇事由が認められるか、ひいては労働者の労務提供が不能となっているかを検討することとなります。その判断においては、契約上どのような労務の提供が期待されていたかを特定することが重要です。勤務成績不良を解雇事由とする場合には、即戦力として期待された中途採用者と新卒の総合職社員では

 

 求められる能力が当然異なってきます。私傷病を理由とする解雇については、従前の業務に従事できなくても他の簡易な業務には従事できる場合など、本当に労務提供が不能といえるのか問題となります。その検討でも、採用の際に幅のある職務に従事することを前提としていたのか、専門職として採用したのかで異なってきます。

 

 「社会的相当性」については、解雇に至るまでの会社の対応や労働者の落ち度が問題とされます。たとえば、問題のある労働者に指導・注意・懲戒などにより改善の機会を与えたか、社員の言動が具体的にどの程度会社業務に支障を生じさせたのかなどを検討します。

 

4 解雇の手続きについても法で定めがあり、解雇する場合には30日前に予告するか、またはその日数分の平均賃金に当たる手当(解雇予告手当)を支払わなくてはいけません(労基法20条1項)。この義務に違反した即時解雇については、即時解雇としての効力は生じないが、解雇通知から30日後の経過か解雇予告手当の支払いがあったときに解雇の効力が生じるとされています(細谷服装事件・最判昭35.3.11・判時218-6)。

 

 このような手続きを取らなくてよい例外の場合として、天災事変等やむを得ない事由により事業継続が不可能な場合、労働者の責に帰すべき事由による解雇の場合が認められています(労基法20条1項但書)。もっとも、「労働者の責に帰すべき事由」については、単に労働者の非違行為が解雇事由に当たるというだけでは足らず、非違行為が重大・悪質で当該労働者を継続して雇用することが会社の事業に支障がある場合に限られます。

 

 また、労働組合との労働協約において解雇に関する手続き的事項を定めている場合(EX組合員の解雇には事前に労働組合との協議が必要等)には、その手続きを遵守することが必要です。

 

5 X社では余剰人員の整理のため①勤務成績不良の社員、②業務命令例に従わない社員、③私傷病で長期間欠勤している社員などを解雇していきたいとしています。解雇の手続きにおいて留意すべきことは何かという点については、解雇権濫用法理の要件を満たすか、手続きが法の条件を満たすかが重要となります。解雇権濫用法理については、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を満たすことが必要です。「客観的に合理的な理由」については、①②③の各事由について、労働契約を一方的に打ち切るだけの解雇事由として認められるか、ひいては労働者の労務提供が不能となっているかを検討することとなります。「社会通年上の相当性」については、解雇に至るまでの会社の対応や労働者の落ち度が問題とされます。

 

 また、労働契約や就業規則で予め定めていない解雇事由では解雇できないのかという点について、予め定めていない解雇事由でも基本的には解雇が可能といえます。ただし、就業規則等に解雇事由が定めてある場合に、解雇事由を定めてあるものに限定するものであると解される特段の事情が認められた場合には解雇事由は予め定めたものに限定されることになるので注意が必要です。