会社行事に参加しない社員への対応

Q X社では就業時間冒頭を朝礼を行いその日の業務内容等に関する連絡を行うことにしている。しかし、新入社員のAはいつもこの朝礼に参加せず、注意されても直そうとしない。この点については、業務上の不都合も生じている。また、Aは職場の飲み会や運動会などにも全く参加しようとしない。参加を強制することはできるか。

A 1 会社は業務の執行全般について社員に対し必要な指示・命令を発する業務命令を行います。この業務命令は就業規則の合理的な規定に基づく相当な命令である限り、就業規則の労働契約規律効により社員はその命令に従う義務を負います(「上司の命令に従わない社員への対応」参照)。

 

 本件の業務に関する朝礼の参加については、有効な業務命令と考えられるので、Aに対して強制することが可能です。なお、業務命令により参加が強制された行事については、その参加している時間帯は労働時間となり、会社には賃金の支払い義務が生じるので注意が必要です(東京急行電鉄事件・東京地判平14.2.28・労判824-5)。

 

 飲み会や運動会の参加については業務との関連性がない以上、業務命令として参加を強制することは困難といえます。ただし、参加を求めること自体は問題ないです。

 

 会社としては、行事への参加を命令する際には、業務命令の範囲内のことでも、業務連絡等の参加の必要性を具体的に説明しましょう。

 

2 業務命令が及ぶ行事への参加を説得しても社員が応じない場合には、参加しないことについて懲戒処分を検討します。事前の準備として、行事への参加を文書で求めることで、業務命令に違反していることをあらかじめ証拠化することができます。

 

 また、懲戒を行うには就業規則、表彰懲戒規程にそのための規定を定めておくことが必要です。
具体的には、業務命令違反を問うためには就業規則に「上長の指示に従う義務」を定めた上、表彰規程に業務命令違反の罰則を明記することが必要です。

(就業規則の例)

第〇条 
 職制上の上位者は下位者の人格を尊重し、下位者は上位者の指示に従い、それぞれ自己の権限と責任に基づき、相互に協力して、その職務を遂行しなければならない。

 

(表彰懲戒規程の例)

第〇条
 会社は、社員が次の各項に該当する行為をした場合には懲戒に処する。
 第〇項 けん責、又は減給処分
  (〇)正当な事由なく会社の指示・命令又は諸規則に従わない時。

 

3 本件では、どうでしょうか。本件の業務に関する朝礼の参加については、有効な業務命令と考えられるので、Aに対して強制することが可能です。飲み会や運動会の参加については業務との関連性がない以上、業務命令として参加を強制することは困難といえます。ただし、参加を求めること自体は問題はありません。

 

 Aが業務命令に反して、どうしても朝礼に参加しない場合には、懲戒処分を検討します。