インターネットに開発中の商品に関する書き込みをする社員への対応

Q 新商品・サービスのプロジェクト中にある社員が当該プロジェクトにかかわる事実についてインターネット上に書き込みをしている。会社としては競合他社に知られ、損害が生じるのは避けたい。どのような対応が可能か。

A 1 考えられる対応としては、社員に対する懲戒処分、そして不正競争防止法の「営業秘密」として救済を求めることが挙げられます。

 

2 社員の自宅などでの書き込み行為は私生活上の行為であるので、これに対する懲戒処分は企業秩序に関係する場合に限られます(国鉄中国支社事件・最判昭49.2.28・労判196-24)。

 

 日本経済新聞社事件では新聞記者が自らのホームページに会社に対する批判及び「社外秘」扱いの事実を掲載したことに対する14日間の出勤停止処分の効力が争われた事案で、上記私生活上の行為について同様の判断基準を示したうえで、企業秩序に関するとして懲戒処分該当性を認めています(東京地判平14.3.25・労判827-91)。

 

3 書き込まれた情報が「秘密情報」(不正競争防止法2条6項)に当たる場合には、「営業秘密」を「不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的でその営業秘密を使用し、又は開示する行為」は「不正競争」に該当します(同法2条1項7号)。

 

 この「不正競争」に対しては開示・使用行為の差止請求(同法3条1項)、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為の請求(同法3条2項)、損害賠償(同法4項)、信用回復の措置請求(同法14条)、刑事罰(同法21条)の対象となります。

 

 「営業秘密」の詳細に関しては、「退職後の機密保持の義務付け」を参照してください。

 

4 会社の具体的な対応としては、まず、事実関係の調査をします。社員が実際に書き込みを行ったか否かについて、公平性を確保するために利害関係人を排除して調査します。

 

 調査の結果、実際に書きこみを行ったことが明らかになった場合には、企業秩序に与える影響が大きいと認められれば懲戒処分を検討していきます。

 

 不正競争防止法上の措置を取る場合には調査結果を書面化して証拠化しておくことが必要となります。

 

5 予防的対策としては不正競争防止法上の措置がとれるように、同法上の「秘密情報」として扱われるための情報管理を行うことが必要です。具体的には、上記、「退職後の機密保持の義務付け」を参照してください。