欠勤を繰り返す社員への対応

Q X社には欠勤を繰り返す社員Y、Zがいる。Yは特に理由を連絡することなく出勤しないことがあり、無断欠勤を繰り返している。Zは精神的な不調からくる被害妄想により、会社の同僚から嫌がらせを受けているという事実無根な主張を繰り返し、「会社側が状況改善するまで休職する」旨の書面を一方的に提出し、以降欠勤を続けている。
 X社はY、Zにどのように対応すべきか。X社はY、Zの解雇も検討している。

A 1 労務の提供は労働者の契約上の基本的な義務であり、合理的な理由のない無断欠勤は重要な義務違反として、債務不履行となります。

 

 合理的な理由かどうかは、欠勤に関する契約上のルールの解釈の問題です。したがって、使用者としては、予め就業規則などで、欠勤が認められる場合について明確なルールを定めておく必要があります。その上で、労働者の欠勤の際には、当該ルールに則った合理的なものであるかを調査、判断します。調査においては、労働者に欠勤理由の説明をさせるようにします。調査は書面で行い証拠を残すようにしておきましょう。

 

 欠勤が合理的な理由のないものであるならば、労働者に対して、欠勤しないよう改善を促していくことになります。注意・指導による改善のプロセスを踏むことで、後の懲戒処分の手続の正当性を確保することができます。注意・指導の過程は、後の争いとならないよう記録化して残すようにしておきましょう。

 

2 注意・指導による改善が見られなければ、懲戒・解雇の検討となります。まずは、改善が見られなければ、懲戒処分もありうる旨の警告を行います。この警告も、労働者に改善の機会を与え、懲戒・解雇の適切なプロセスを踏んだことを証拠化するものであり、書面で行うことが重要です。

 

 懲戒処分を行う際には、まずは軽い処分により改善を促し、それでも改善が見られない場合に重い解雇等の処分を行うというプロセスが重要となります。このような適切なプロセスを踏むことが懲戒処分の正当性を基礎づけることになります。 

 

3 冒頭の事例では、Yについては欠勤の理由の説明を求め、明確な説明が得られないのであれば、合理的な理由のない欠勤として、改善を求めていくことになります。

 

 Zについては、被害妄想による主張・要求自体は欠勤の合理的な理由とはならないでしょう。しかし、Zの被害妄想の原因が精神的な不調にあるため、使用者として適切な対応をとらなければ合理的な理由のない欠勤と認められないことがあり、注意が必要です。

 

 判例では、精神的不調による欠勤を続けている労働者については、使用者は「精神科医による健康診断を実施するなどした上で、・・・その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応をとるべき」として、そのような対応がない場合には、無断欠勤を理由とする懲戒処分を認めないという判断をしています(日本ヒューレット・パッカード事件・最判平24.4.27・労判1055-5)。

 

4 本件ではどうすべきでしょうか。冒頭の事例では、Yについては欠勤の理由の説明を求め、明確な説明が得られないのであれば、合理的な理由のない欠勤として、改善を求めていくことになります。

 Zについては、被害妄想による主張・要求自体は欠勤の合理的な理由とはならないでしょう。しかし、Zの被害妄想の原因が精神的な不調にあるため、使用者として適切な対応をとらなければ合理的な理由のない欠勤と認められないことがあり、注意が必要です。判例では、精神的不調による欠勤を続けている労働者については、使用者は「精神科医による健康診断を実施するなどした上で、・・・その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応をとるべき」として、そのような対応がない場合には、無断欠勤を理由とする懲戒処分を認めないという判断をしています(日本ヒューレット・パッカード事件・最判平24.4.27・労判1055-5)。

 

(警告書の例)

警告書

平成〇年〇月〇日

〇部〇課
○○殿

○○部長
〇〇 〇〇

 貴殿は、正当な理由がないのにもかかわらず、無断欠勤を繰り返しております。貴殿のこのような行為は当社就業規則第〇条〇項に違反しております。
 そのため、貴殿に対しては、平成 年 月 日に無断欠勤を改めるよう指導を行い、その後も度々改善を求めてきました。しかしながら、依然として無断欠勤は改善されているとは言い難い状況です。
 そこで、貴殿に対し、無断欠勤を改めるよう最後の警告を行います。事後、貴殿が無断欠勤を改めないのであれば、就業規則に従い懲戒処分を下さざるを得ないため、ご留意ください。

以上

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