降格・減給・退職勧奨のやり方

降格・減給・退職勧奨


問題社員への対応方法として、理想的な流れは以下の通りです。

望ましい流れ④
①日報を使って、従業員自身に課題を認識してもらう

②会社側はていねいな指導教育を行う

③(指導教育の成果がなければ)降格・減給・退職勧奨などを実施する

④(それでも成果がなければ)紛争回避のための対処を行う(配置転換・合意退職・降格)など


本記事では、上記の流れのなかでも3番目の
「降格・減給・退職勧奨」について説明します。画像のフローチャートでは④にあたります。


日報などを用いた指導教育をしても、従業員の勤務姿勢に変化がない場合は、懲戒処分をもって対応すべきです。


しかし、懲戒処分を行うときにはいくつかの注意点があります。注意点を守っていないと、万が一裁判となったときに、裁判官の印象を悪くしてしまいます。

裁判官の印象が悪くなるということは、そのまま裁判の不利に繋がります。

懲戒処分ひとつにしても、十分な配慮が必要なのです。

強制的に退職勧奨したが、団体交渉に発展し合意退職した事例

弊事務所が関わった事例をご紹介いたします。

問題社員実例

────<概要>────

プラスチック加工業を営むX社の従業員Yは、他の従業員Aと些細なことで喧嘩をし、Aは耐えきれずに辞めてしまった。

翌日、工場長BはYを呼び出して、退職願用紙を渡し、自分で辞めるか、1ヶ月の猶予をもって会社から解雇するかどちらかだと退職勧奨をした。


Yは退職願を提出したが、その後労働組合から団体交渉申入書が届いた。


X会社(使用者側)の主張

(1)合意退職により退職済みである。


Y従業員の主張

(1)退職は強制であり撤回する

(2)社員の地位を有するので未払い賃金を支払え

(3)謝罪せよ



結果

X会社は、Y従業員に対して紛争の解決金を支払うこととなった。

解決事例NO3 より

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この件の問題点としては、段階を踏まずにいきなり退職勧奨をしてしまった点にあります。

問題があったときに、すぐ退職勧奨をするのではなく、まずは懲戒を検討するべきです。

かといって、辞めさせるための懲戒では、裁判所に意図を見抜かれてしまいます。会社のこれまでの実績を前提とした懲戒ルールをつくり、それにのっとって処分を下すべきなのです。

懲戒処分をするときの注意点

先ほども説明しましたが、裁判所は「辞めさせるための懲戒」は見抜きます。

「辞めさせるための懲戒」でないと判断してもらうためには、会社のルールとしての懲戒処分実績づくりが重要です。


会社のなかで、どういう基準でどのような懲戒処分をするかのルールが決めておき、それに沿って処分を行えば、裁判官は「この会社はこの事例であればこのような処分運用をしている。ルールにのっとった運用であり、辞めさせる意図はない」と考えます。


懲戒処分をルール化するにあたっては、まず、過去の自社懲戒例を集めましょう。大きい会社であれば懲戒委員会の設置も検討しましょう。

また、ルールを作るときは、過去の懲戒例と大きな相違がないようにしなくてはなりません。


裁判所は、就業規則より、目に見えない社内ルールの有無に着目しています。辞めさせたいという意思が透けた重い懲戒処分は、裁判では逆評価される可能性が高いのです。

減給・降格

減給・降格についても同様です。「退職させよう」という意図を裁判所は敏感に見破ります。

減給や降格は、あくまで適正な評価をして本人に問題点を意識してもらうきっかけであり、本人にチャンスを与えるためのものだと考えるべきです。


わずか数パーセントの減給でも本人に対しては強烈なメッセージとなります。

うまく扱うことが重要です。


ただし、減給や降格は、原則として就業規則に記載が必要であることには注意してください。

退職勧奨を行う時期

退職勧奨については、社員の事情とタイミングを合わせることで、合意に至りやすくなる場合があります。

たとえば、本人がまとめて有給休暇を取り出したタイミングで退職勧奨をすれば、合意に至る可能性が高まります。


というのも、まとめて有給休暇を取っているということは、現在の職場に在籍する意思が切れて転職活動をしている可能性が高いからです。

よって、会社側から退職の話を持ち出すことで、円満に合意に至る可能性があるのです。

退職勧奨

退職勧奨を行うとなった場合には、

◯退職勧奨を行うことをためらわない

◯退職解決金を支払うことをためらわない


という2つの点に注意してください。


まず、十分な指導教育をしてきたのにも関わらず、従業員の仕事ぶりに変化が見られないのであれば、ためらわずに退職勧奨を行いましょう。

自分の能力が発揮できない職場で働き続けることは、従業員にとっても会社にとってもよくありません。退職した方が従業員・会社の双方にメリットがある場合もあるのです。


また、退職解決金を支払うことに対してもためらってはなりません。問題のある従業員が退職することは、会社にとってはよいことです。退職解決金の支払いをためらって雇用し続けたり、支払わずに後からトラブルになったりした方が、会社に損害を与えます。


ただし、退職合意書などに、守秘義務条項を入れるなどの対策はしておきましょう。

退職合意書には「本合意書の存在及びその内容の一切を秘密として保持し、その理由を問わず、その相手方を問わず一切開示または漏洩しない。」

などの記載をしておくとよいでしょう。

退職勧奨の具体的な進め方

退職勧奨の具体的な進め方については、下記を参考にしてください。

1:退職勧奨の方針を社内で共有する

2:退職勧奨を整理したメモを作成する

3:従業員を個室に呼び出す

4:従業員に退職しておきたい旨を伝える

5:退職勧奨についての回答の期限を従業員に伝え、検討を促す

6:退職の時期、金銭などの処遇を話し合う

7:従業員に退職届を提出してもらう

問題社員対策は弊事務所へご相談を

ここまで、懲戒処分や退職勧奨についての話をしてきました。

懲戒処分や、退職勧奨を検討されるということは、問題社員に対して企業なりの指導教育や対策をしてきたのにも関わらず、状況が改善しなかったということです。


これ以上どうすればよいのかわからない、退職勧奨をしたいがもし断られた場合の対処方法がわからない、などの不安がありましたら、是非弊事務所へご相談ください。


弊事務所には、問題社員サポートプランというサービスがございます。

このプランは、問題社員への対応について継続的に相談を受けさせていただくものです。

料金は月額2万円+税、相談時間は1ヶ月あたり上限5時間です。

継続的なサポートだけでなく、個別の案件に対しましても柔軟に対応可能です。



また、問題社員の退職勧奨のお手伝いをするプランもご用意しております。

退職勧奨面談に弁護士が立ち会ったり、退職勧奨後のトラブルについて弁護士が交渉を行うことが可能です。

プランの詳細については、「退職勧奨の進め方」の記事を御覧ください。


担当者様だけで悩まず、どうぞ専門家にご相談ください。

弊事務所では、使用者様からのご相談は初回無料で承っています。