配置転換による紛争回避
問題社員対応の流れとしては、
①日報使用による従業員側の自己認識
②会社による指導教育
③(指導の成果がなければ)降格・減給・退職勧奨
④(③でも成果がなければ)配置転換・合意退職・降格など
が理想的です。
日報を使用した指導教育や懲戒処分を行っても状況が改善しなかった場合は、④にあたる紛争回避のための処置が必要となってきます。
上記フロー図の中では⑥番にあたります。
本記事では、対処のなかでも配置転換について詳しく説明いたします。
配置転換について円満な解決がなされた事例
弊事務所が解決した事例を紹介いたします。
───<事案>───
とある従業員が持病のため、年50日以上欠勤。
業務内容上、経験を要する部門であるため、人員の代替がなく外注をかけることも不可能。
出荷直前の作業になるため、欠勤することにより作業の遅れが生じ、納期の関係上、他の従業員が残業を強いられる状態。
業務に支障の少ない部門に配置転換を命令した。
解決事例No.9 より
──────────
交渉の経緯
<第一段階>
相手方が弁護士を入れ、以前の部門に戻すように要求してきた。(配転された部門の環境では、頭痛がするというのが1つの理由)
使用者側の意見としては、以前の部門で雇い続けることはできず、無理なら辞めて欲しいとの意向。
<第二段階>
配置転換自体には双方が合意した。しかし、現時点で解雇することは難しい。
使用者には他の部門での雇用ができないかも検討してほしいと頼んだが、人員が足りていない部門はないとのこと。
<第三段階>
交渉の結果、配置転換を受け入れるとの連絡があり、復職時期の調整に入った。
しかし、使用者より、他の社員が嫌がっているために合意退職して欲しいという要望がくる。
相手方は復職の意思が強く、現時点では合意退職ができる状況ではない。弁護士の方から従業員を説得するように伝える。
<第四段階>
使用者から相手方へ関連会社への出向を提案する。この提案は、労働者側にとっても以下のメリットがある内容であった。
・頭痛の問題が生じていた部門からの異動
・労働条件は以前と変わらない
<第五段階>
復職および出向の合意による解決
このケースでは、最終的に円満に解決することができました。
なぜ、紛争を回避して円満に解決できたのか考えてみましょう。
配置転換を命ずる時のポイント
配置転換を命ずるときに重要なのが、
本当に配置転換をさせる必要性があるのか
という点です。
問題社員に対して、辞めさせる意図を含んだ配置転換はすべきではありません。後々トラブル化したときに、裁判所は「やめさせるために配置転換を行った」ということを見抜きます。
配置転換を命ずる際には、
・配置転換の必要性
・人選の妥当性
・本人の被る不利益への配慮
などを書き出して整理してみると良いでしょう。これらがスムーズに書けないようだと、配置転換の合理性そのものに疑いがあります。
また、転勤に際して会社側の配慮を残しておくことも重要です。
裁判例では、会社が従業員のために転勤先の賃貸物件を探してあげていた事実が評価されたり、本人の物件希望を聴取していた事実が評価されたケースもあります。
本事例がなぜ円満解決したのか
先ほど紹介した事例が、円満に解決した理由としては、
・事実、配置転換の必要性があった
・配置転換の必要性について説明を尽くし、労働者も理解を示した
・今回の出向命令の条件は、労働者側にもメリットがあるものだった
という点があげられます。
配置転換のメリットが使用者側にも労働者側にもあり、必要性についても両者が納得できたのです。
一方で、他の職員との関係から、使用者としては辞めてほしいという気持ちも徐々に生じ始めていました。
もし、気持ちに従って、相手方従業員を辞めさせてた場合、紛争は激化していたと予測されます。
使用者側がなんとか踏ん張ってくれたからこそ、解決した事案であると言えます。
問題社員の対応は弊事務所にご相談を
配置転換などの処分は、会社からの指導教育を十分行ったにも関わらず、状況が改善しなかった場合に取るものです。
これ以上、貴重な時間と労力を問題社員の対応に割きたくないとお考えなのであれば、専門家に相談することをおすすめします。
弊事務所では、労務問題を専門的に取り扱う弁護士が多数在籍しております。
実際に問題社員に対応してきた実績もございます。
(解決事例集ページもご参考にしてください。)
問題社員サポートプランというサービスもあり、これまでの紛争事例を踏まえて問題社員への対応について継続的に相談を受けさせていただきます。
専門家に任せてしまうことで、会社側の負担も軽減されますし、法律の専門家がサポートするので後からトラブル化するのを防げます。
使用者様からのご相談は初回無料で承ります。どうぞお気軽にご連絡ください。