退職勧奨の進め方
退職勧奨・退職勧告と解雇との違い
退職勧奨・退職勧告とは、会社から従業員に対して退職を促し、従業員に退職について了解してもらい、同意の上で退職届を提出してもらって退職してもらう方法です。
これに対し、解雇とは、従業員の同意なく、一方的に雇用を終了させる方法です。
つまり、退職勧奨・退職勧告は、あくまで従業員の意思で雇用を終了させるのに対し、解雇は、従業員の意思に反して雇用を終了させるところに大きな違いがあります。ポイントについて詳しく解説します。
希望退職の募集と退職勧奨との違い
希望退職の募集は、退職を希望する従業員の応募を待つ消極的な方法です。
これに対し、退職勧奨は、特定の従業員に対し、積極的に退職の動機付けを行います。
希望退職の募集に従業員からの応募がなかった場合に、特定の人に退職勧奨を行うこともあります。
退職勧奨の基本的な考え方
問題がある従業員(成績が悪い、協調性がない、業務の指示に従わない等)に対し、会社が退職勧奨・退職勧告を行うこと自体は、違法ではありません。
しかし、先立って解雇をしてしまうと、不当解雇であるとして訴訟等の紛争に発展するケースが多いため、解雇の前に退職勧奨を行うことで、合意を確認した上で退職してもらうことは、企業側のリスク回避として有用な手段となります。
退職強要トラブルの回避、退職勧奨の進め方の注意点
退職勧奨が退職強要とされる場面
長時間多数回にわたる退職勧奨は、「退職強要」と判断される危険があります。
退職勧奨・退職勧告の面談を繰り返し行うや、従業員が退職を拒否していても、再度退職の方向で説得を続け、再考を促すこと自体は問題がありません。
しかし、1回あたりの面談時間が2時間以上の長時間になったり、面談があまりにも多数回行われたりした場合には、退職勧奨の許容限度を超えた退職強要と判断される危険があります。
そのため、退職勧奨の時間・頻度については、常識的な範囲にとどめ、従業員の任意を尊重する態様で行うように注意が必要です。
退職勧奨により損害賠償請求される場面
退職勧奨が「退職強要」と判断された場合、損害賠償請求される危険があります。
裁判例では、
「労働者が自発的な退職意思を形成するために社会通念上相当と認められる程度をこえて、当該労働者に対して不当な心理的威圧を加えたりその名誉感情を不当に害する言辞を用いたりする退職勧奨は不法行為となる。」
としています。
配置転換により損害賠償請求される場面
退職を目的とした配置転換や仕事を取り上げるような行為は損害賠償請求される危険があります。
裁判例では、勤務態度、勤務成績の評価が悪かった従業員に対し、退職して子会社に就職することを勧告し、授業員もこれに応じて転職した事例があります。
この事例では、会社が退職勧奨を行っていた時期に、約4ヶ月もの間、この従業員を一人の部屋で執務させ、他の従業員との接触を遮断し、朝会などにも出席させなかったという事情がありました。
その点を踏まえて、この従業員は、退職・転籍は強要されたものであり、退職強要が該当すると、会社を訴えました。
上記の内容に対し、裁判所は、会社の行為が、従業員を退職に追い込むための嫌がらせであり、およそまともな処遇であるとは言い難いとして、会社に対し、150万円の慰謝料の支払いを命じました。
退職届を出さないと解雇?
退職届が無効取消しとされる場面
従業員に対する退職勧奨の際に、会社側から「退職届を出さなかったら解雇する」という発言をすることは無効取消しとされる危険があります。
会社が、「退職届を出さなかったら解雇する」として従業員に対し退職勧奨した場合で、実際には、解雇することができないと裁判所が判断するようなときは、従業員が退職勧奨に応じて退職届を提出しても、退職の合意が無効となる危険があります。
裁判例では、「退職届を出さなければ解雇する」と会社から説明された従業員が、退職届を出さなければ解雇されると誤信して退職届を提出した事例があります。
これに対し、裁判所は、退職の合意を無効とし、従業員を復職させ、会社に対し退職から復職までの賃金の支払いを命じました。
退職勧奨での話し方・言い方具体例
退職勧奨は任意の決定をしてもらう事が大前提です。そのことを踏まえた上で、以下が具体的な流れになります。
退職勧奨の方針を社内で共有します。
まず、対象の従業員に対し、退職勧告を行うことについて会社の幹部や直属の上司に意見を聴き、退職勧奨をする方針を社内で共有しておきます。
これにより、退職勧奨が会社の総意であることを対象従業員に示すことができます。
退職勧奨を整理したメモを作成します。
これは、従業員に退職勧奨をする際に、できるだけ説得的に伝える時に行います。
退職勧奨の際には、緊張してしまうことも考えられ、また、従業員も冷静ではいられない可能性があるので、事前のメモは有用です。
従業員を個室に呼び出します。
会社の会議室など個室で行いましょう。
従業員に退職してほしい旨を伝えます。
退職勧奨の話の切り出し方。
「これまで、何度も勤務態度について指導し、改善するようにお願いしてきました。」などと話を切り出しましょう。
会社としても雇用を継続するための努力をしてきたことを伝えます。
「これまでに、トラブルがあったときに~ということをお伝えしたということが何度かありましね。しかし、改善が見られず、今回も同じようなトラブルになっていますね。」などと伝え、これまで何度も機会を与えてきたこと、それでも改善が見込めなかったことを伝えましょう。
退職してほしい旨を伝えます。
「あなたの処遇をどうすべきかについて社内で話し合った結果、あなたには、この会社で働くことがあっていないと考えています。そのため、会社としては、あなたに退職して頂きたいと考えています。」などと退職してほしい旨を伝えましょう。
従業員の反論や質問に対応します。
従業員からの反論や質問が予想されます。事前に作成したメモを見ながら退職してほしい理由を説明することに重点を置き、冷静に会社の考えを伝えましょう
退職勧奨についての回答の期限を従業員に伝え、検討を促します。
退職勧奨の回答をその場で求めるのは避けましょう。すぐに回答できる事柄ではありません。さらに、強引な印象を与えてしまいます。
退職の時期、金銭等の処遇を話し合います。
従業員が、条件によっては退職勧奨に応じる意向を示した場合は、退職の時期や金銭面の処遇を決めていきましょう。
退職勧奨に応じて退職した場合、退職理由をいわゆる自己都合退職とすることによって、雇用保険を最短90日から最長330日間受給することが可能ですが、退職する従業員の生活の不安が大きいときは、退職届を提出することを条件に、一定の退職金を支払うことも検討しましょう。
従業員に退職届を提出してもらいます。
退職勧奨の結果、従業員が退職することに納得したときは、必ず退職届を提出してもらいましょう。
退職届は、解雇ではなく、従業員が退職勧奨に応じて退職したことを示す重要な書類となるため、必ず取得する必要があります。
弁護士法人i 退職勧奨プラン
退職勧奨の進め方、伝え方
弁護士法人iでは、退職勧奨について、進め方、伝え方の相談を承っております。
弁護士が退職勧奨の事情をお伺いし、退職勧奨のタイミングや退職勧奨の伝え方について具体的なアドバイスを行います。
また、従業員が退職勧奨に応じない場合の解雇のリスク判断についても、退職勧奨前に必ず事前にご相談いただき、把握しておいていただくことが必要です。
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初回相談料:無料
退職勧奨面談への弁護士の立会い
弁護士法人iでは、従業員への退職勧奨の面談について弁護士の立会いによるサポートを行うサービスを実施しています。
特にトラブルが予想される退職勧奨の場では、弁護士の立会いによるサポートをお勧めします。
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退職勧奨後のトラブルについての交渉
弁護士法人iでは、退職勧奨によりトラブルが発生してしまった場合の解決に向けての交渉のご相談やご依頼もお受けいたします。
退職勧奨のトラブルは、解雇トラブルともつながるところがあり、対応を誤ると大きな負担を負うことになりかねません。
退職勧奨をめぐるトラブルについてのご相談は、ぜひお早目にされることをお勧めします。
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