4. 事業場外労働のみなし労働時間制

(1) 事業場外労働のみなし労働時間制とは

 事業場外のみなし労働時間制は、事業場外で事業に従事しており、使用者が労働者の労働時間の把握をすることが困難な場合において、実際の労働時間にかかわらず労働時間を一定の時間にみなす制度です。

 

(2) 適用できる場合

みなし労働時間制が適用できる要件は、①労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事したことこと、②労働時間を算定しがたいことです。

 

ア 要件①について

要件①における「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。

 

次に、「事業場外」であるかは、指揮監督が困難であるため、労働時間の算定義務を免除すべき場所という観点から判断されます。

 

イ 要件②について

   「労働時間の算定が難しいとは、客観的に見て、労働時間の算定が難しいということです。使用者が、実際に労働時間を把握しているかとは別の問題です。

 

 

(3) 適用できる場合の労働時間

ア 効果

 みなし労働時間制の適用があった場合、労働時間は以下のようになります。

 

 原則は、「所定労働時間労働したものとみなす」こととなります。

 

 例外として、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合は、「通常必要とされる時間」です(労基38の2①ただし書)。

 

 「通常必要とされる時間」は、労使協定定めることも出来ます(労基38の2②)。

 

イ 事業場外労働の範囲

 事業場外労働に付随して、それと一体的に事業場内での労働が行われるときには、事業場内で行われる労働もあわせて事業場外労働として把握できます。

 

 これは、事業場外労働として扱うべきものを、たまたま事業場内で行ったからといって、労働時間としての扱いを変えることは不合理だからです。

 

付随して、これと一体的に行われるというのは、事業場外労働について発生する注文書等の作成など本来事業場外労働のなかで処理すべき業務やその延長としての付随業務のことをいいます。