パワハラ問題が起こったとき、事業主はどうすべき?
ここまで、パワハラの定義や実例、事業主の責務としての対策方法などについて説明してきました。
では、実際にパワハラが起こったときはどう対処すべきでしょうか。
本記事では、
〇加害者のタイプ別対応例
〇パワハラが発覚したあと、事業主はどうするべきか
〇パワハラ行為に対する懲戒処分の目安
の項目について解説を行います。
加害者のタイプ別対応例
パワハラの加害者の中には、「パワハラ行為をしている自覚が全くない人」や「自分もパワハラを受けており、負の連鎖が起きて部下にきつく当たっている人」など、様々なタイプがいます。
事業主は、被害者のフォローを行うことはもちろん、加害者に対しても適切なケアをしなくてはなりません。
しかし、誰にでも通じる絶対的な対応方法はありません。加害者のタイプに応じて、少しずつ対応を変えていく必要があります。
部下いびりタイプ
パワハラをしている自覚がなく、何度も同じ行為を繰り返します。対応せず放置していると、退職者が続出し、会社に大きな影響を与えます。
このタイプは、本人に自覚がないので、非常に対応が困難です。
これまで会社に貢献してきたことを評価しつつ、パワハラに対する正しい知識を共有することが重要です。いきなりパワハラ行為を否定すると、態度が一変する可能性もあります。
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能力限界タイプ
加害者自身も、自分の能力以上の仕事を抱えており、センシティブになっている状態です。ちょっとしたことで感情的になり、部下に強く当たってしまいます。最近管理職になった人などに多いタイプです。
このタイプのトラブルを解決するためには、加害者自身に対する支援も必要です。加害者に過剰なストレスがかからないように、人的にも物的にも支援をすることで、パワハラ行為が改善されやすくなります。
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被害者タイプ
加害者自身が、相当なパワハラ行為を受け続けていたパターンです。長期間行為を受け続けているため、本人の考えや行動を変えることは難しいです。
部下がいないポジションに配置換えを行うなどの対応が必要です。
パワハラは、かつての被害者が部下を持った時に、自分がされていた行為を部下に強制するケースがあります。パワハラが負の連鎖を生んでしまうと、会社にとっては大きな損害となります。
パワハラを許さない風土を会社全体で作り上げていく必要があります。
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信念タイプ
加害者が非常に仕事ができる人物で、常に高い意識で仕事に臨んでいるパターンです。
自分と同じレベルの仕事を部下に求めるため、部下からするとついていくのがやっとです。また、高圧的な人が多く、たとえ指導内容が正しかったとしても、指導される側に心理的ストレスを与えてしまいます。
会社としても、貢献度が高い職員であるため注意しづらく、取り扱いが難しいです。
被害者タイプと同じく、部下を持たない形で活躍してもらうのがよいと思います。
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パワハラ・セクハラ混合タイプ
パワハラと合わせてセクハラも行うタイプです。
なかには、性的関係となることを要求し、断られた腹いせとしてパワハラを行う人もいます。そういったタイプはかなり悪質です。
重い処罰を行うことをおすすめします。場合によっては、退職勧奨をすることも可能です。
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精神疾患タイプ
加害者自身が私生活などで問題を抱えており、精神疾患に罹患していたケースもあります。
どなる、なじる、殴るなどの暴言・暴力行為の他、気分の浮き沈みが激しいことなどが特徴です。
こういったタイプは懲戒処分以外に、休職も検討してください。
加害者の精神疾患の原因が、会社での仕事内容や別のパワハラによるものであれば、その原因を取り除く対応も必要です。
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ローパフォーマー対策タイプ
ローパフォーマー(会社への貢献度が低く、なかなか成果をあげられない人)対策という名のもとに、会社自体がパワハラをしてしまうケースです。
ローパフォーマーは組織全体の約2割ほどいると言われています。部署に一人ローパフォーマーがいるだけで、他の8割の社員のモチベーションが下がってしまう恐れがあります。
会社としては悪影響を及ぼす存在ですが、だからと言ってパワハラをすることは違法です。「無視」「隔離」「排除」などの行為は絶対にやめましょう。
適切な対応をとることが重要です。
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パワハラ発覚後、事業主はどうすべきか
会社の規模や事情によっては、十分なパワハラ対応が取れない場合があります。
特に、パワハラ問題が原因で懲戒解雇ができる事例は極めてまれです。
となると、配置転換などで、加害者と被害者の距離を物理的に離すことが重要となります。
配置転換においては、加害者側を異動するのが一般的です。しかし、場合によっては被害者を異動させざるを得ないこともあります。
(そこまでひどいパワハラ行為でなく、加害者と他の職員との関係が良好である。加害者がその部署に必要不可欠な存在である。などのケースが当てはまります。)
被害者側を異動させる場合は、慎重に行わなくてはなりません。被害者からすれば、「私はパワハラ被害を受けた上に、異動までさせられるのか。」と感じます。納得できない方も多いでしょう。
本人の希望を聞いたり、継続的なサポートを行ったりして、満足してもらわなくてはなりません。
異動が「隔離」や「排除」だと思われてしまうと、労働紛争に発展する可能性があります。
小規模事業者で、加害者と被害者の配置転換ができない場合は、
・被害者の上司を社長に変更する
・指揮命令を行う人を、社長と被害者に変更する
などの対策が必要です。
加害者と被害者の仕事上の接点をできるだけ減らす配慮をしなくてはなりません。
パワハラに対する懲戒処分の目安
パワハラ行為による懲戒処分は、慎重に考えなくてはなりません。
先ほども説明しましたが、パワハラが原因で懲戒解雇できる事例は非常に珍しいです。
継続的な暴力や傷害を行った事例であれば適応されますが、暴行が一度である場合は懲戒解雇は難しいです。
また、就業規則に記述してあるからと言って、長期間の出勤停止処分は、有効にならないことがあります。
パワハラをした加害者に「パワハラをしたんだから会社に来るな」というのはとても難しいのです。
では、実際にはどのような懲戒処分をすべきでしょうか。
以下に量刑の目安をまとめました。
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(パワハラ行為の種類/懲戒処分の量刑)
単発の行き過ぎた指導:口頭注意など
単発の暴行・脅迫・侮辱・名誉棄損:減給・短期間の出勤停止
継続した行き過ぎた指導:減給・短期間の出勤停止
セクハラとパワハラの両方:長期間の出勤停止(重度のセクハラなら諭旨解雇や懲戒解雇が妥当)
継続した暴行・脅迫・侮辱・名誉棄損:諭旨解雇や懲戒解雇
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企業によっては、今起こっているトラブルがどの種類に当てはまるのかわからない、適した懲戒処分がわからないなどの悩みをお持ちかもしれません。
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