炎上させないための問題社員対応セオリー


問題社員に対して、多くの経営者の方が「一刻も早く辞めて欲しい」という本音をお持ちかと思います。

しかし、だからといって社員をぞんざいに扱うことは許されません。誤った対応をすることで、後から元社員に「不当な扱いを受けた」と訴えられる可能性があるからです。


ケースによっては、不当解雇と判断され、解雇自体が無効となる可能性もあります。その場合、未払い賃金を支払わなくてはならなくなります。


後からトラブル化させないためにも、またインターネットで炎上させないためにも、会社は望ましい流れに則った対応を取らなくてはなりません。


しかし、近年は裁判所の姿勢が変化してきており、従来どおりの対応では不十分だとされるケースが増えてきました。

本記事では、


◯炎上リスクとは

◯従来の問題社員対応セオリー

◯裁判所の姿勢の変化

◯これからの時代に求められる問題社員対応


について説明します。

炎上リスク

炎上(ネット炎上)とは、インターネット上で非難や誹謗中傷が集中する現象のことを指します。

近年、毎日のようにニュースやワイドショーなどで、個人あるいは法人の炎上に関する話題が取り上げられています。

TwitterやInstagram、Facebookなどの普及により、前よりも炎上が起こりやすくなっているのです。


企業が一度炎上してしまえば、求人などに悪影響を及ぼします。また、場合によっては会社自体のイメージも低下します。

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たとえば、2020年に起こった炎上事例でいうと、とある専門商社の総合職会社説明会に参加申込をした女性のケースがあります。

この女性は、会社説明会に申込みをしたあと、同社から「◯◯様からご予約いただいた説明会は【総合職】の説明会となりますが男性向けの内容となっております」と書かれたメールを受け取りました。さらにそのメールには、今回の予約を会社側がキャンセルすることや、一般職向けの説明会への参加を促すような内容も書かれていました。


この対応を受けた女性は、メールの本文をキャプチャーしてTwitterに投稿。またたく間に拡散されて、「男女雇用機会均等法違反ではないのか」など様々な批判が寄せられました。(参照:J-CASTニュース

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このケースは、採用前の就活生への対応が炎上したケースですが、同じように社員への対応が炎上するケースも考えられます。

これからの時代を生き抜く企業としては、炎上や事件化を避けることは最優先にすべき事項なのです。

従来の問題社員対応のセオリー

問題社員への対応の流れとして、これまでよく言われていたのが以下の例です。

従来の問題社員対応のセオリー

①口頭での注意・指導

②書面での注意・指導

③軽い懲戒処分から段階的に始める

④解雇に至らない重い懲戒処分

⑤最終警告書

⑥解雇

これを見る限り、従来のセオリーもいくつもの段階に分けられており、ていねいに対応しているように思われます。

しかし、近年ではこれだけでは不十分だと考えられるケースが増えてきています。

さらに、使用者側からすれば何気ない言動が、パワーハラスメントとして訴えられる可能性もあるのです。

裁判所の姿勢の変化

最近では、先ほど説明した従来のセオリー通りの対応をしても、解雇が無効になる事例が増加してきました。

具体的に裁判所がどのような点に注目しているかというと、

◯解雇回避努力の義務をきちんと果たしているか

◯被解雇者との協議義務をきちんと果たしているか

の2点を重要視する傾向にあります。

特に、被解雇者への面談と指導教育を尽くしたかどうかを厳しくチェックするのです。

つまり、使用者側としては、問題社員に対して処分を下す前に、

◯面談

◯指導教育

を実施し、かつその事実を証拠として残しておくことが重要になってきます。

面談や指導を行った事実が証拠として残っていれば、裁判所からもきちんと対応したと認められやすくなるのです。

証拠を残す手段としては、

◯面談メモ

◯面談内容の録音

◯業務指示書

◯進捗確認表(日報)

などがあります。

炎上の時代に望ましい流れとは?

さきほど、従来の問題社員対応では不十分だというお話をしました。

では、炎上リスクがつきまとうこれからの時代、問題社員の対応はどのような流れでやっていくべきでしょうか。

弁護士がおすすめする問題社員対応の流れを以下に紹介します。

問題社員対応のフロー

①日報を使用し、従業員自身に問題点を認識させる

②担当者による、指導教育を行う

③当該従業員の改心・一部態度を改めてもらう

④それでも指導成果がでなければ、降格・減給・退職勧奨を実施する

⑤それでも改心しなければ、紛争回避を実施(配置転換・合意退職・降格など)

上記の流れを見てもらうとわかるように、あくまでも解雇は最終手段であり、できるかぎり指導教育で改善しようというスタンスを取るのが良いでしょう。

問題社員対応を事件化・炎上させないためには、以下の2つのポイントに着目するとよいです。


◯「排除」「隔離」「無視」は絶対に避ける

 問題社員に仕事を与えない、職場内のコミュニティから外す、別の場所に隔離するといった行為は絶対に避けましょう。パワーハラスメント(パワハラ)に該当する恐れがあります。

パワハラには、代表的な言動の6類型というものがあります。その中には、「人間関係の切り離し」といったものがあります。

人間関係からの切り離しとは、特定の労働者を仕事から外し、長時間別室に隔離する。あるいは一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させることを言います。

つまり、排除・隔離・無視は、この「人間関係からの切り離し」に該当し、パワハラだと判断されるリスクがあるのです。


パワハラの6類型については、「パワハラとは?定義と6つのパターン」」の記事で詳しく説明していますので、詳細が知りたい方は参考にしてみてください。



◯退職ありきの姿勢をとらない

退職を促すために、配置転換等を行っておきながら「本当の意図について見抜かれることはないだろう」と考える企業様がたくさんいらっしゃいます。しかし、この考えはとても危険です。

退職ありきでの処分や対応は、労働者自身や裁判所に必ず見抜かれます。


童話で有名なお話に北風と太陽というものがありますが、このお話と同じように、退職させようとして冷遇するとかえって問題社員は退職しません。

むしろ仕事を頑張ってもらうように努力をすることで、結果として自主退職した例もあります。

大事なことは、ゴールを解雇に設定せず、何とか雇用を続けたいという姿勢で面談と指導教育を積み重ね、対話を重ねることです。

たとえ対話が、内容的に対話とならなかったとしても、証拠として実績を残しておくことが重要です。

問題社員対応は弁護士にご相談を

問題社員への対応は、SNSが普及するにつれて炎上リスクが上がったこともあり、年々複雑になってきています。

対応を少しでも間違えると、不当な扱いであると訴えられ、解雇が無効になる恐れがあります。

そうなると、企業担当者には心身ともに過大な負担がかかります。また、解雇が無効となった場合は、未払い賃金を支払う義務が発生します。

より、リスクを下げて問題社員対応をしていきたいのであれば、専門家に相談することをおすすめします。


弊事務所には、問題社員対応の実績豊富な弁護士が在籍しております。


また、使用者様からのご相談は、初回無料で承っています。どうぞお気軽にご連絡ください。