企業の民事賠償責任

第12 企業の民事賠償責任

1. 企業の民事賠償責任とは

労働災害が発生した場合には、企業及び代表者や現場監督者等は刑事上の責任を追及される可能性があります。

 

 そして、これとは別に、労働災害の原因として企業の安全配慮義務違反が認められる場合には、企業は労働者に対して民事上の賠償責任を負うことになります。

 

 労働災害の場合には、労災保険が使用できるので、一定額については補償することができますが、労災保険を超える部分に関しては企業が労働者に補償しなければなりません。

 

 

2. 安全配慮義務とは

 安全配慮義務とは、使用者が支配管理下にある労働者の安全と健康を守らなければならない義務のことです。

 

 安全配慮義務の内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況によって異なりますが、労働安全衛生法及び労働安全規則等の安全衛生関係の法令が一つの基準となります。

 

 労働安全基準法に違反する労働条件は無効となります(労基法42条、13条)。そのため、労働安全衛生法の安全衛生基準は最低労働条件となります。そして、労働安全衛生規則では、「第二編 安全基準」の項目があり、その中で具体的な安全基準が規定されています。

 

 また、安全配慮義務を負う主体として、労働者の直接の雇用主が労働者に対して安全配慮義務を負うことは当然ですが、元請負事業主と下請労働者との関係や、親会社と子会社の労働者との関係において安全配慮義務違反が認められるとされた裁判例があります(三菱難聴訴訟事件:最一小判平3・4・11労判590号14頁)(長野じん肺訴訟:長野地判昭61・6・27判時1198号3頁)。

 

 

3. 賠償項目

 主な賠償項目は、以下の通りです。

 

・治療費

 

・付添費用

 

・将来介護費

 

・通院交通費

 

・家屋・自動車等改造費

 

・葬儀関係費用

 

・休業損害

 

・慰謝料(損害慰謝料、後遺障害慰謝料)

 

・後遺障害・死亡逸失利益