第5 高度プロフェッショナル制度の創設
1. 高度プロフェッショナル制度とは
(1) 高度プロフェッショナル制度とは
高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・製菓型労働制)とは、職務の範囲が明確で一定の年収用件(少なくとも1,075万円以上)を満たす労働者が、高度な専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置を講じること、本人の同意や労使委員会の委員の5分の4以上の多数による決議などを要件として、労基法の労働時間、休日、時間外・休日・深夜労働割増賃金等の規定が適用除外となる制度です(改正労基法41条の2)。
これは、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する一定の要件を満たす労働者の希望に応えることがねらいです。
(2) 実施要件
高度プロフェッショナル制度は、その事業上に労使委員会が設置されており、その事業場の労使委員会で、委員の5分の4以上の多数で、一定日数の休日の付与、法定の健康確保措置の実施などの事項について決議し、かつ、使用者がその決議を所轄の労基署に届け出て、対象労働者の同意を得た上で、対象業務に就かせた場合で、健康確保措置等として実施した内容を労基署に届け出た場合に、労基法で定めている労働時間、時間外・休日・深夜労働割増賃金の法規制が適用除外されるという制度です(改正労働法41条の2)。
労使委員会とは、労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に意見を述べることを目的とする委員会です。
高度プロフェッショナル制度の対象となることに同意した従業員は、その後、制度対象から外れたいときは、会社側に申し出て外れることができます。
対象労働者の雇用形態は、無期雇用、有期雇用の別は問いませんが、有期雇用の場合、1回の契約期間は、最長5年間まで認められます(改正労働法14条1項1号)。
高度プロフェッショナル制度導入にあたり労使委員会で決議しなければならない事項
高度プロフェッショナル制度の対象業務
① 金融商品の開発業務、ディーリング(売買)の業務、アナリスト(投資分析)の業務
② コンサルタント業務等 |
制度対象となる労働者の要件
① その労働者と使用者との間で、書面などの方法によって、職務範囲が明確に定められていること
② その労働者に確実に支払われることが見込まれる年収が、労働者の平均給与額の3倍を相当程度上回る水準として省令で定める金額以上であること |
2. 高プロ社員に対する労働時間・割増賃金規定の適用除外
(1) 高度プロフェッショナル制度により適用除外される労基法の規定と効果
1 適用除外される労基法の規定 |
2 適用除外に伴う効果 |
①労働時間の1日8時間、 1週40時間の限度(32条) |
1日、1週に何時間働かせても労基法違反にならない。 |
②休憩時間の付与義務(34条) |
休憩時間を与えなくてよい。 |
③休日を1週間に1日与える義務(35条) |
休日を与えなくてよい。 |
④労基署への「時間外・休日労働協定の届出義務」(36条) |
時間外・休日労働協定を届け出なくてよい。 |
⑤時間外・休日・深夜労働の割増賃金の支払義務(37条) |
時間外・休日・深夜労働を行わせても割増賃金を支払う必要がない。 |
(2) 管理監督者と高プロ社員との適用除外規定の範囲の違い
対象者 |
時間外労働 割増賃金 |
休日労働 割増賃金 |
深夜労働 割増賃金 |
①高度プロ制度 適用社員 |
○ |
○ |
○ |
②管理監督者、 機密事務取扱者等 |
○ |
○ |
× |
注)○印は労基法の労働時間等の規定が適用除外となり、割増賃金支払いが不要となるもの。
高度プロフェッショナル制度対象社員の場合には、深夜労働の割増賃金支払義務の規定についても適用対象外となっていることが特徴です。