是正勧告・指導票
第7 是正勧告
1. 是正勧告書とは
是正勧告書とは、労働基準監督官による調査(定期監督や申告監督、災害時監督など)によって、事業場に労働法令違反の事実が確認された場合に是正を促すために作成される書面です。
労働基準監督官は、書式1のような是正勧告書を調査時に携帯しているのが通常です。
そして、調査の結果、違反があると判断された場合、その場で「法条項等」、「違反事項」、「是正期日」を記入して、事業場の担当者に交付することがあります。
調査の場で交付されない場合には、後日労基署への出頭を促されて、そこで交付されます。
なお、交付の際は、受領欄に署名、押印を求められます。
[書式1 是正勧告書]
[是正勧告の手続図]
2. 法的効力
是正勧告の法的効力は、労働基準監督官という行政機関の行政指導と捉えられています。
したがって、是正勧告は、行政処分ではなく、直接的な強制力がないので、是正勧告に対して行政不服審査法や行政事件訴訟法により、不服申し立てや取消訴訟を提起することはできません。
是正勧告は、あくまで行政指導であることから指導に従わなくても問題ないとも考えられます。
しかし、是正勧告は、書式1の通り罰則付きの各種労働法令違反している状態を改善しなければ、送検手続を取られることもあります。
送検手続きは、刑事処分を行うかどうかについて、検察官に記録を送付するということです。
そのため、是正勧告を無視して違反を放置すれば刑事処分を受ける可能性もあります。
したがって、是正勧告は行政指導ではあるものの、事実上はこれに従わざるを得ないといえます。また、実際にも、適切に対応することが適切です。
3. どう対応すべきか
①是正勧告には従いましょう。
是正勧告には、直接的な強制力はありません。しかし、是正勧告に従わずに放置すれば、送検手続を経て刑事処分を受ける可能性があります。
②主張したいことは主張しましょう。
労基署が調査に入った際は、資料に載っていないことで重要な事項があれば主張しましょう。使用者が労基署に対し意見できる機会はあまりありません。また、期間についても具体的な事情を説明すれば猶予してもらえる配慮は期待できます。
③納得できるまで説明してもらいましょう。
是正勧告により是正を促されたことの意味を納得できるまで説明してもらいましょう。さらに、アドバイスをしてもらう良い機会と考え、日ごろ抱いている疑問について教えてもらいましょう。
4. 弁護士による是正勧告対応
是正勧告を受けるということは、会社の社会的信用を低下させ、会社にとって大きな損害を負う可能性もあります。
しかし、是正勧告を受けてしまった以上は、会社の人事労務管理を見直す機会を得たと考えてみてはいかがでしょう。
是正勧告を機会に、会社の人事労務関係を見直すことで、職場の雰囲気も変わり、仕事がより効率的になることで、会社にとっての利益につながる例も見られます。
しかし、改善方法がわからなかったり、改善の余地がないと思ったりする場合もあると思います。
そんなときは、専門家である弁護士に相談することで改善に向けた助言を得てはいかがでしょうか。
第8 指導票
1. 指導票とは
指導票とは、労働基準監督官による調査(定期監督や申告監督、災害時監督など)によって、事業場に労働法令違反の事実は確認できないものの、改善することが望ましい事項について作成される書面です。
また、指導票は、労基署の労働技官(産業安全専門官、労働衛生管理官)が事業場を訪れ、労働衛生面についての指導を行った場合にも交付されることがあります。
なお、労働技官には、是正勧告書を作成、交付することはできません。
2. どう対応すべきか
指導票の効力は、是正勧告に比べ、それほど強力ではありません。
しかし、指導票が交付された場合にも、対象事業場の責任者は、指定期日までに改善状況について労基署に是正報告書を提出しなければなりません。