第8 平成30年パート法、労働契約法、派遣法改正内容
1. 改正内容
「働き方改革実行計画」に基づき、以下に示す法改正を行うことにより、企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の実効ある是正を図る。
1. 労働者が待遇差について司法判断を求める際の根拠となる規定の整備 ○ 短時間労働者・有期雇用労働者について、正規雇用労働者(正社員:無期雇用フルタイム労働者)との待遇差が不合理か否かは、それぞれの待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化。 (有期雇用労働者を法の対象に含めることに伴い、題名を改正(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)) ○ 有期雇用労働者について、正規雇用労働者と①職務内容、②職務内容・配置の変更(人事異動)の範囲が同一である場合の均等待遇の確保を義務化。 ○ 派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化。 ○ また、これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備。
2. 事業主の労働者に対する待遇に関する説明義務の強化 ○ 短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明の義務化。
3. 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備 ○ 上記1の義務や2の説明義務について、行政(都道府県労働局雇用環境・均等部(室)等)による履行確保措置及び行政ADR(訴訟外の紛争解決制度)を整備。 |
施行日:平成32年(2020年)4月1日
ただし、中小企業については平成33年(2021年)4月1日
2. パートの待遇の原則8条とは
(1) 規定内容
現行パート労働法8条は、「事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、
不合理と認められるものであってはならない。」と定められています。
(2) 待遇とは
現行パート労働法8条でいう「待遇」とは、すべての賃金の決定、教育訓練の実施、福祉厚生施設の利用のほか、休暇、休日、休憩、安全衛生、災害補償、解雇等、労働時間以外の全ての待遇が含まれます。
(3) 不合理か否かに判断基準
待遇の差異が不合理であるか否かは、業務の内容、業務に伴う責任の程度、転勤、昇進を含む人事異動や本人の役割の変化の有無、範囲、合理的な労使の慣行等の観点から判断されます。
3. 正社員並みパートの差別禁止(9条)とは
(1) 規定内容
現行パート労働法9条では、通常労働者(いわゆる正社員)と同視すべきパート(正社員並みパート)をパートであることを理由として、その待遇全般について、正社員等との合理性のない差別的取扱いをすることを禁止しています(パート労働法9条)。
(2) 9条正社員並みパートとは
正社員並みパート(9条)の要件は、通常労働者と比較して、職務(業務の内容・責任)の程度が同一であること。また、職務の内容及び配置の変更の範囲が、その事業場において雇用される期間の全期間を通じて同一と見込まれること(人材活用の仕組み、運用等が同一であること)です。
(3)「職務内容が同一」とは
「職務」とは、業務の内容及びその業務に伴う責任の程度のことです。職務の同一性を判断する場合、業務の内容と責任を分けて役職名等でなく、実態を見て比較します。
「同一」とは、完全に一致するという意味ではなく、実質的に同一と言えるか、著しく異ならないか、という観点から判断します。
(4)「人材活用の仕組み、運用等が同一」とは
人材活用の仕組み、運用等については、ある労働者が、ある事業主に雇用されている間に、どのような職務経験を積むことになっているかを見るものであり、転勤を含むいわゆる人事異動の有無や範囲、本人の役割の変化等を総合判断することになります。
正社員とパートとの間で、人事異動等の有無や範囲を比較する際には、過去の人事異動等だけでなく、文書や慣行によって制度化されている客観的な事情によって判断することができる将来の見込みも含めて、人事異動等により、就く可能性のあるポストの範囲も比較します。