第1 憲法から見た労働法領域

1 日本国憲法は我が国の最高法規である(憲法98条)

 そして、憲法において労働法領域に関する規定(27条 28条)があるため、この規定に反する法律は認められない。いわば憲法27、28条により労働法領域の外延が画されている。
 同条は生存権(憲法25条)が定める「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を総則として、労働関係という独自の分野を対象としてそれぞれに特有な原則を規定するものである。

 

2 憲法27条1項

 「すべて国民は、勤労の権利を有し義務を負ふ」
 労働市場において、その労働によって生活する国民が適切な労働の機会を得られるようにすべきという国政の基本方針を宣言するものである。

 

3 憲法27条2項

 「賃金・就業時間・休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」とする。

 これは労働条件の決定を使用者と労働者にゆだねずに国家が直接介入し、規律するために国家が労働条件の基準を「法律」で定めるべき義務を負うことを宣明するものである。

 この義務の具体化が個別的労働関係で中心的地位を占める労働基準法である。

 その他、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などがある。

 

4 憲法27条3項

 「児童は、これを酷使してはならない」

 個別的労働関係を中心として社会生活における児童の保護の原則を定める
 具体的には労働基準法6章において入職年齢、労働時間などに関する少年の保護規定が定められている。

 

5 憲法28条

 「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他団体行動をする権利は、これを保障する」と規定する。団体的労使関係に関する法的規制の基本規定であり、労働者にたいして団結兼・団体交渉兼・団体行動憲を保障する。