5 労働契約、就業規則、労働協約の効力関係

 労働契約の発生根拠、すなわち労働契約の内容を定めるものとして、①労働契約、②就業規則、③労働協約があることは既に述べてきました。そして、労働基準法なども労働契約を規律する直律的効力を持ち、法の基準が契約の内容となる場合があります。それでは、①②③と労働基準法の相互の効力の関係はどうなっているのでしょうか?

 

 まずは、最低基準を定める労基法があり、これを下回る労働契約、就業規則、労働協約は無効となります(労働基準法>労基法を下回る契約、規則、協約=無効)。

 

 労基法の基準を上回る契約、規則、協約については労基法よりもこれらの効力が優先されます。そして、基本的には①労働協約>②就業規則>③労働契約という優劣の関係になります。個々の労働者が使用者と有利な契約を結んでいたとしても、就業規則や労働協約によって労働者に不利益となる修正がされることもあり得るのです。

 

 もっとも、そのようなことが無制限に行われるわけではありません。就業規則については労働者に不利益な労働条件とすることができる場合が法律上制限されています(労働契約法9条、10条)。労働協約については、労使の合意で定められるものであるうえ、そもそも労働協約の効力が及ぶ範囲が限定され、その範囲の拡大にも条件が設けられています(労働組合法17条、18条)。