第2 労働審判第1回期日までの対応

1 第1回期日までの準備

(1) 使用者・事業者側は申し立てられる相手側となることが多いので、相手方としての対応を押えておくべきといえます。労働審判の相手方は裁判所から呼出状と答弁催告状を受け取ることで、手続きの開始を知ることとなります。まずは、第1回の期日と答弁書提出期限をチェックしましょう。

 

 労働審判では代理人には弁護士を立てるのが原則であり、相手方としても期日に都合が就く弁護士を探さなければなりません。

 

 そして、相手方は申立人の申立書に対応する答弁書を第1回の期日までに提出しなければなりません。提出期限は、実務上第1回期日の10日ないし1週間前程度に設定されます(労働審判規則14条1項)。この提出期限は、答弁書準備のための期間とされており、厳守することが求められていますが(労働審判規則16条1項)、期限までに出さない主張は全く認められないというものでもありません。

 

 もっとも、労働審判においては書面での主張が大変重要であること、期日までに労働審判委員会が書面に目を通す時間を確保する必要があることから、労働審判を有利に進めるには期限までに答弁書を提出すべきです。

 答弁書に記載すべき事項は労働審判規則16条1項に定められています。特に、答弁書提出の段階で、争点となることが予想される事項に関する証拠の記載、証拠書面の添付(規則16条2項)が求められていることに注意が必要です。

 

 また、答弁書及び添付の証拠書面については、裁判所への提出に加えて、申立人(代理人)に対して裁判所を経由しない「直送」をすることが必要です(規則20条3項)。

 

(2) 申立人側の準備としては、第1回期日前に相手方の答弁書が送られてくるので、期日までにその内容を吟味し、相手方主張の不明点、相手方への反論を準備することが必要です。答弁書を受けて新たな主張を追加したい場合には補充書面を提出することもできます。この場合、補充書面は期日までに提出することが望ましく、相手方には直送しなければなりません。

 

 また、第1回期日には実務上、申立人本人や会社側証人の人証調べが行われることが多いので、その尋問準備を想定した準備を行うことも必要になります。

 

(3) 労働審判では、期日が原則3回と短く、迅速な解決が志向されています。第1回期日から証拠調べをするので、人証調べの尋問の準備をしておかねばなりません。また、審判委員会は当事者の合意での即時解決である調停も試みてくるので、調停による解決を許容する場合には、望む解決水準を確認しておくことも必要となります。

 

2 弁護士に依頼するポイント

 労働審判においては、申立人であれ相手方であれ弁護士を代理人とすることが一般的です。代理人を選任せずに本人が手続を行うことも許されていますが、労働審判においては3回の期日での解決が求められるため、第1回目の期日までに提出する書類での主張が重要であり、専門性が高い弁護士に依頼することが合理的といえます。

 

 弁護士に依頼する場合には、呼出状、答弁書催告状を受け取ったらすぐに弁護士を探しましょう。上述のように、労働審判では第1回目の期日までに提出する書面での主張を充実させることが重要になります。弁護士のスケジュールの調整や打合せ・書面作成の時間確保のためにも、迅速に相談しましょう。

 

 特に、第1回目の期日に出席できるかは必ず確認をしましょう。そして、短期間で効果的な準備をするには、弁護士にも専門性と経験が求められるので、労働審判の経験がある弁護士を探すことが望ましいです。