第3 労働審判期日における対応

1 第1回期日の手続

(1) 当事者、とくに相手方が期日に不出頭の場合について、法は特に定めを置いていません。通常の民事訴訟では、答弁書の提出もなく、出頭もしない場合には、原告の請求を認めたものとして判決が下されますが、労働審判では、不出頭の相手方の取扱いは労働審判委員会の判断に委ねられることになります。

 

(2) 第1回期日では争点及び証拠の整理、証拠調べが行われ、可能である場合には1回目の期日で調停の試み、労働審判の言渡し、手続きの終了がなされることがます。

 

 争点、及び証拠の整理手続きにおいては、労働審判委員会から積極的に不明点に関する求釈明が行われることが予測されるので、その場で答えられるように、代理人を選任している場合であっても、当事者本人や事情を把握する担当者が出席することが必要となります。

 

 証拠調べのうち特に人証調べについて、労働審判では他の手続きと明確に区別されずに運営されており、争点整理の過程での当事者の発言や調停での発言が事案の心証形成に用いられることもあるので注意を要します。人証調べについては、尋問の準備をしておくことが必要不可欠となります。

 

 また、労働審判では労働審判委員会が証人尋問の形式によらず直接に話を聞く「審尋]を行うこともあります。この手続は原則記録も残りませんが、労働審判委員会が直接当事者に質問を行うため、答弁書と当事者の回答が食い違った場合の心証はよくありません。審尋に備えて、当事者と答弁書の内容を確認し、想定問答集を作成するなどの対策が必要です。

 

(3) 第1回期日の所要時間としては、一般に1時間半から2時間は必要と思われます。裁判所による期日の指定で時間が明らかにされない場合には、問合せをすることも考えられます。

 

2 調停に移行した場合

 調停における手続きでは、両当事者が同席することはありません。一方当事者と労働審判委員会が他方当事者のいない場所で話し合い、委員会が心証を開示しながら調停成立を目指します。調停に置いては、労働委員会が強く誘導することもあり、裁判と違って、労働審判した場合の結果をはっきりと告げる場合もあります。調停を拒否して、審判を選択した場合には、調停で告げられたとおりの結果で負けることも覚悟しなければなりません。

 

 審判で負けた場合には、通常裁判に移行して争うこともできますが、この場合には訴訟追行の負担(会社代表者、担当者の訴訟への出席)や、弁護士費用の追加なども生じることになります。したがって、調停を機に和解による解決を選択することも多く行われます。

 

3 第2回期日の手続

 準備については、第1回期日でのやり取りを踏まえてさらに主張を補充したり、新たに証拠を提出する必要があるならば、これを準備し提出します。労働審判では、やむを得ない事由がある場合を除き、第2回期日が終了するまでに主張及び証拠の書類提出を終えなければならないとされています(労働審判規則27条)。当然、期日の途中で書面や証拠を準備することは出来ないため、実際には、第2回期日までに追加する主張、証拠の準備を終えていなければなりません。

 

 第2回期日においては、第1回期日で行った手続きを前提に、争点・証拠の整理、証拠調べ、調停の試みを行い、調停の見込がなければ労働審判の言渡しがなされる事もあります。
 第2回の期日で審理が終結しなければ、第3回の期日が指定されることになります。

 

4 第3回期日の手続

 主張及び証拠の提出は第2回の期日までとなるため、第3回の期日ではすでに労働審判委員会の心証形成に向けた手続きは終了していることが多いです。したがって、第3回期日では調停を試み、調停が成立しなければ結審し審判の言渡しがなされることとなります。

 

 第3回期日の準備としては、調停による解決を求めるのかの方針決定、求める場合の解決水準の検討をすることが必要です。調停に際しては、決定権を有する決裁権限者の出席か、代理人に対する解決水準の綿密な確認が不可欠となります。

 

 調停が成立しない場合には、労働審判委員会により審理の終結が宣言され、労働審判の言渡しがなされます。複数の請求が同時に審理されている場合には、それぞれの請求につき別々に審判を出してもらうことが考えられます。このようにすることで、審判が受け入れられる請求については審判を維持し、争いが継続する見込みの髙い請求に対する審判だけを異議することが可能になります。

 

 労働審判の告知後には、審判を受け入れるか、これに対して異議を出すかの選択を行うことになります。労働審判に対する異議の効力は、労働審判の効力そのものを失わせてしまうため、慎重に検討する必要があります。つまり、労働審判で認められた主張についても、法的な効力を得られなくなるということです。さらに、一度した異議の撤回はできないため、その点にも留意が必要です。